2006年12月14日

続「Winny事件」判決を斬る!

前のエントリで、あれだけ長々と書いておきながら、まだ書き足りないことがあります。

たぶん最後まで読み切った人も少ないだろ、とか思ったりするんですが、それはともかく(^_^;


判決の内容などは前のエントリを見て頂くとして、この判決がなぜ、おかしいのか。
それは判決中での論理が一貫せず、破綻しているからです。

この「事件」のポイント

1:Winnyは「包丁」か「銃」か→Winny自体が違法なのかどうか
2:47氏が「著作権をぶっ壊す。著作権侵害を蔓延させる」という目的でWinnyを開発、公開したのかどうか→検察側ストーリーの信用性
3:そもそも、実行犯との面識も接触も連絡もないのに、「幇助罪」を適用できるのか→法令適用の問題、「故意」性を認めるかどうか


の3点だと思います。

で、京都地裁の氷室眞裁判長はそれぞれについて、端的にはこのように判断しています。(もちろん、私なりの意訳ですが)

1:Winnyは違法性がない→「銃」ではなく「包丁」だ。
2:検察側のストーリーはウソ。捏造した供述は食わないよん。捏造していない部分は食うけどね。
3:Winny自体は「包丁」だから、幇助の規定をむやみに拡大解釈はできないよ。うん。
 でもね。あんた、みんなが違法ファイルをやりとりしてるの知ってて放置したでしょ。それでも公開を続けたでしょ。それはだめ。故意性があるよ。著作権法違反幇助は成立。


いやぁ、今見てもおかしいわ。これ。

検察側主張のポイントの大半をつぶしておきながら、「故意性」の一点勝負で有罪に持ち込んじゃったんですね。

幇助ってそもそもどういう風に成立するのよ? Wikipediaではこんな解説をしています。

幇助(ほうじょ)とは実行行為以外の行為で正犯の実行行為を容易にする行為一般を指す。幇助犯の処罰を規定する刑法第62条は次のように規定している。「正犯を幇助した者は、従犯とする。」
 
例えばAがB殺害の凶器となった拳銃を犯人Cに交付した行為や、勤め先に強盗が入ることを知ったDが店の金庫の鍵を開けておく行為などがこれにあた る。手段、方法は問わない。上に挙げた例のように物理的に実行行為を促進する行為はもとより、行為者を励まし犯意を強化するなど心理的に実行行為を促進し た場合も幇助となる。
幇助の概念は曖昧であり、あらゆる行為を犯罪としかねない危険性があるため幇助犯の成立を安易に認めることは避けなけれならない。例えば強盗に使用 された包丁を売り渡したホームセンターの店員の行為や、海賊版DVDの作成に使用されたコンピューターやメディアなどを供給した電器店の行為など、本来、 犯罪行為とは無関係な法的に否認されていない中立的行為による幇助について、どのように処罰範囲を限定するか、近時、議論が高まっている。
 
なお実際の運用では幇助犯として処罰される場合は極めて少なく(1/10程度)、複数人が犯罪に関与した場合、大半は共同正犯として処理されている。幇助として処罰されるのは賭博開帳の見張りがほとんどである。



で、今回の判決では最終的に、「中立的行為による幇助」の成立の是非が問われたわけです。(Winny自体は中立的、と判決で言っちゃっているので)

前のエントリでも書きましたが、中立的なものであるWinnyが犯罪行為に利用されたとしても、47氏に特定の犯罪を援助しているとの確定的な認識がないのに、正犯行為の因果関係のみで「幇助の成立」を認めていいのかどうか という大問題をしっかり紐解いて、結論を導くべきなのに、深く考えずに、「成立」にしてしまったわけです。

なんで一番大事なポイントの論点をワザとはぐらかしたのか。


結論ありきだったからでしょうね。


こういう奴を野放しにすると、犯罪者を捕まえるのがめんどくさくなる時代が来る。治安政策に支障を来す。

臭いものにはふただ。


そんな考えがあったのかどうか。とにかく、今ある証拠をそれなりに評価して有罪に導くには、「故意性」の一点突破でいくしかない。そう思ったんでしょうか。その結果が、こんな論理矛盾を来す判決になってしまったのだと考えます。




昨日、横浜簡裁で出た「三菱ふそう」の無罪判決との違いも浮き彫りになります。

簡裁で2年半も審理すること自体、異例ですが、判決もなかなかのものです。

三菱の虚偽報告、リコール免れ工作をはっきり「あった」と認定しながら、「でも、法に定められた報告要求自体が行われてなかったじゃん。犯罪証明がない。だから無罪」という結論です。これは間接的に、「そもそも、国交省がしっかりしないから、三菱が虚偽報告してリコール免れを計ろうとするんだ。国交省の役人は仕事サボってんじゃねーぞ(゚Д゚)ゴルァ」と言ってるのです。

新聞などは「おかしい判決だ」といってますが、私は三菱事件の簡裁判決は「あり」だと思っています。非常に単純明快でわかりやすい。「役人とザル法が三菱のリコール隠しを幇助をした」と暗に言っているようなモノですから。

それに比べ、京都地裁判決のわかりにくい事ったら…。


この2つの判決の最大の違い。それは「国の関与」という気もします。

「こいつは確かに犯罪者というには酷だけど、でもほっといたら世の中メチャクチャにされる。焼き入れたろか」→京都地裁

「三菱は確かに悪いけど、でももっと悪いのは国と法律じゃん。民間ばっかりいじめるな(゚Д゚)ゴルァ」→横浜簡裁

といった具合で。まあ、地裁は司法試験に合格したエリート判事だけ。簡裁は裁判所事務官から内部試験を受けて任命された特任判事補が大半、という土壌の違いもあるのかもしれませんね。


ちなみに、民事訴訟と違って刑事事件の場合、判決全文が言い渡し後、作成されるので、今回の事件の判決全文も、まだ弁護士も見ていないと思われます。今ごろ、左陪席判事が必死こいて書いているんでしょうね。問題は、京都地裁がそれをWebに掲載する度量があるかどうかです。

最高裁のホームページに「下級裁判所判例集」というコーナーがあり、裁判所が「これは」と思う判決全文をPDFでアップロードしています。1週間後くらいでしょうかねぇ。今回の事件の判決が載るとしたら。

実行犯との面識も音信もないのに幇助の成立を認めた稀有な事例ですから、客観的に見て掲載基準は満たすと思います。


もし、掲載されなかったら…。相当ダメダメな判決ということを認めたに等しいですよ。



逃げるなよ、京都地裁!




komelong_01-160.gif

posted by こめろんぐ at 12:32 | Comment(3) | TrackBack(0) | ニュースに一言! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
前の記事と合わせて読みましたが、なかなか読み応えがありました…(;^_^A こめろんぐさんもお疲れ様でした。

この判決は私も驚きましたね。確かにWinnyのもたらした社会的影響は計り知れませんが、それよりもこの判決のもたらす今後の影響の方が由々しき事の様に思いますね。

まあ、国も極秘資料が次々に暴露されて心底腹が立ったのでしょうが、これが民間しか被害が無ければ違う対応だった様な気がします。

もちろん2審では逆転無罪が出ると思ってますが、さてどうなるでしょうね…。
Posted by 考える葦 at 2006年12月14日 19:55
ありがとうございます!!私のモヤモヤがやっとすっきり^^なんとかこの件を消化できました。>焼きいれたろか!!はウマイ!!そう言ってみればいいさ氷室くん。
Posted by silverfox1701 at 2006年12月14日 22:00
考える葦さん>どもです!
っていうか、ケータイで読むの、大変だったでしょう…。
一体どれだけのパケ代が(^_^;
まあ、2審の大阪高裁がどう判断するんでしょうねぇ。一審判決の書き方によっては、楽々逆転無罪になる可能性を秘めてますから、今頃裁判官も必死こいていると思いますよ(爆)

silverfox1701さん>こんばんは!
いやいや、読むのが大変だったのではないかと心配しています(^_^;
でもまあ、整理しないとわかりにくい判決ですよ。これは。裁判員制度になったら(この件は制度の対象外ですが)こんな判決を書くことは許されないと思います。
Posted by こめろんぐ at 2006年12月14日 23:55
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