2007年07月21日

ピストンリング一つで生産が止まる車業界

まず、遅ればせながらですが、このたびの新潟県中越沖地震で被災され、亡くなられた方々に心からお悔やみを申し上げます。また、子の地震で被災されたすべての方の、一日も早い復興をご祈念申し上げます。私自身はせいぜい、募金などの形でしかご協力できませんが…。


さて、その新潟県中越沖地震で、自動車部品メーカーのリケン柏崎事業所が被災し、車のエンジンの要であるピストンリングの供給が止まりました。これにより、トヨタ、日産、ホンダ、スバルなど国内自動車メーカーすべての生産工場が止まりました。

詳しいことは↓
【新潟県中越沖地震・柏崎ルポ】12メーカーの主要拠点が閉鎖に −response.jp

復旧急げ、自動車業界650人集結 柏崎の部品工場へ −asahi.com

車の心臓部のエンジンの中でも、たった10数グラムにしか過ぎないピストンリングが、自動車生産工場のみならず、すべての下請け=部品メーカーの生産をもストップさせてしまったのです。この地震が与えたダメージは予想以上に大きなものになりそうですね。

自動車メーカーがこぞって、工場の再開を手伝おうと立ち上がったのも、わかるような気がします。再起不能と思えるほど破壊された工場を、週明けには再開できそうなところまで急ピッチで修復したというのはホントに、エライ!と思ったりするわけで。

実はオイラ、昔、半年だけトヨタの自動車工場で働いたことがあります。いわゆる「期間工」という奴です。今日日はやりの「偽装請負」ではなく、トヨタに直接雇用されての仕事でした。愛知県の車体組立工場で、コロナ、ビスタ、カムリの製造ラインに入り、エンジンマウントやABS関連の部品の取り付けなどを行っていました。この仕事は、例のオーストラリアツーリングの資金稼ぎのためにやったんですが、そりゃあもお、すさまじく過酷でしたよ。詳しくは「灼熱大陸」の中で追々書いていきたいと思っていますが…。

この工場で、初めて「カンバン方式」の現場に携わりました。

組立ラインのすぐ横、従業員から見ればすぐ後ろに、部品が入ったプラスチックの箱がたくさん摘まれています。 この箱の一つ一つに、部品名、部品の箱の企画、部品の数が書かれた札が挟まっていて、部品箱を消費するたびにその札を改修ポストに入れていました。この札が「カンバン」です。カンバンは定期的に改修され、下請け=部品製造会社への発注書の代わりに使われます。このカンバンは、ねじの一本一本にも存在していました。

カンバンをポストに入れないと、部品が足りなくなり、ラインが止まります。ですから、取り忘れは致命傷となります。とはいえ、作業は1分くらいのサイクルでやってましたから、結構取り忘れが生じてしまいがちなので、オイラは結構「先取り」をやってました。これはまだ消費してない「在庫」の分の部品箱から「カンバン」を抜き、ポストに入れておいたんです。

いやあ、怒られましたね。現場の責任者を「組長」というんですが、仕事が終わってから組長に呼ばれ、「先取りは絶対にやってはいかん」とこっぴひどく怒られましたよ。なんでかというと、「みんながカンバンの先取りをやったら、工場の通路がパンクしてしまう。必要以上に部品の生産発注が生じてしまうので会社だけでなく、下請けにも迷惑がかかる」と。なるほど、オイラが「先取り」すれば、その分部品メーカーの仕事量が一時的に増える。で、その後しばらく部品発注が途絶えることになるから、下請けの人繰りも大変になるということです。

ジャストインタイム生産。当時のオイラたちは、輸出量や国内での販売状況によって仕事量がめまぐるしく変化してました。そうしないと車メーカーが持たないというのはわかるんですが、そのツケを従業員がおわされちゃタマランぜと思ってました。しかし、ジャストインタイムは下請けも一心同体なんですよね。その視点が抜けていたオイラは、怒られてしかるべきだったのだと思います。

今回、その下請けの決定的なストップにより、自動車メーカー12社のみならず、その下請けの何百もある会社が事実上、止まりました。これを、「わずかなことで全体が止まる欠陥システム」とみるか、「競争力を得るためにリスク覚悟でトコトン贅肉を落とした結果」とみるか。評価が分かれるところでしょう。

それにしても、ピストンリングって、リケンにしか作れないんでしょうか。いや、逆に言うと、リケンの技術が優れているからこそ、これほど注文が集中してしまったということなんでしょうね。結果、このような災害に、全メーカーが対応できない事態に陥ってしまった。これはリスク管理の問題ではなく、品質を重視した結果だと思いたいです。

ちなみに、リケンはBMWなど海外自動車メーカーからの発注もあったようです。今後、影響は海外にも及ぶのかもしれません。日本のものつくりの技術のすばらしさがなせる影響、といったら怒られるでしょうか。

ところで、バイク業界はどうだったんでしょう。バイクの方がはるかに精密なピストンリングを必要としていますし…。社会的影響は少ないのかもしれませんが、バイク乗りとしては気になります。


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posted by こめろんぐ at 16:55 | Comment(5) | TrackBack(0) | ニュースに一言! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これは、やっぱりリスクをどう分散するかの問題だと思います…。カンバン方式は優れた生産方式ですし、リケンの技術も世界でトップクラスでしょう。

でも、それほど日本の自動車産業に必要不可欠な生産ラインなら、一極集中させてはいけなかったと思いますね。せめて3箇所くらいには分散させておかなくては…。多分いくら下請けとは言え、設備投資が出来ない程絞られてはいないと思いますからね…(;^_^A

震災は誰の身にも降りかかりますから、これを機に、日本の産業を地勢学的に見直す必要があるかも知れませんね。それはひいては地域格差の是正にもなるでしょうし…。犠牲を犠牲のまま終わらせて欲しくはないですね。
Posted by 考える葦 at 2007年07月21日 20:08
他にピストンリングを製造していたメーカーとしては、帝国ピストンリング、日本ピストンリングなどがあげられると思います。リケンがダメだから直ぐに切り替えられるというわけでもないでしょうが、これらの株あがってますね。今回ばかりはカンバン方式の、在庫ストックをゼロにし無駄を無くすということがマイナスに働き、一カ所がアウトなら全てがストップしてしまったということ。確か前にもありましたよ、下請けの火事か事故か何かで全体が止まってしまったこと。
Posted by anno at 2007年07月22日 04:39
これは驚きましたね。在庫を持たない生産とは良く言ったもんですが、ここまで在庫ゼロとは思ってもいませんでした。
Posted by laki at 2007年07月22日 11:49
考える葦さん>こんにちは!
今回は新潟の会社が罹災し、こんな事態ですが、仮に愛知県豊田市の直下型地震があったらものすごいことになりますよ。まだ、工場付近への一極集中がない分、まだリスク回避策は取れているのかなぁと。
おそらく、他のメーカーに代替できないほど、必要不可欠な技術をリケンがもっている、ということなんでしょうね。
かといって、ピストンリングだけで工場をいくつも分散させるのは、リケンほどの規模では無理だし…。むやみに複数に拡散するのはかえって、品質面での管理が追いつきません。リケンに追いつけ追い越せ、と技術革新を挑む会社がどんどん成長してくれば、それがリスク拡散になるのだと思います。

annoさん>どもです♪
そういえば、下請けの火災、ありましたね。アレはトヨタ一社だけダメージ食らったんでしたっけ?
在庫ストックゼロの「カンバン方式」は、すべてが順調なことが前提ですからねぇ。在庫を抱えると、日本の自動車業界の競争力や品質ががたがたになりますから…。難しいですね。

lakiさん>こんにちは!
実態はこんなもんなんですよねぇ。そいや、工場時代に出したオイラの「カイゼン」、まだ生きてるかなぁ?(爆)
Posted by こめろんぐ at 2007年07月22日 17:12
なんの策もないまま戦争の泥沼にはまり込んでしまった大日本帝国ではなく、無条件降伏という屈辱からはじまる戦後日本でもない。
ふたつの時代にふれたからこそ、私の脳裏にうかぶ国がある。
四海に囲まれ独立し力に満ちたその国は間違いなく我々の眼前に存在する。
それが黄金の国ジパングだ。
Posted by ティアワン気取りか at 2015年06月23日 22:13
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